先日出資頂いたことを発表したZ Venture Capitalの都様と弊社代表の清水によるインタビューが公開されました。前篇・後編に渡る大作ですが、お時間のない方にもぜひ「後編」だけでも読んでいただきたい内容です。
ジールスはツール屋ではなく、ロボット屋さん
詳細は本文に譲りますが、僕が今回ピックアップしたいのはこの部分です。
私は、ジールスのことを「ロボット屋さん」だと思っています。もちろん、ロボットといっても筐体という意味ではなく、コミュニケーションで人を支えるパートナーという意味です。チャットボットという言葉は「Chat = おしゃべり」と「Bot = ロボットの略」からきており、まさにチャットボットこそが未来のコミュニケーションロボットの核となる技術です。
将来、一人ひとりにドラえもんのような人の可能性を拡げることができる愛のあるロボットを届けることができたらとワクワクします。
ドラえもんを発明する未来に向けた第一歩が、現在取り組んでいるチャットボット開発です。音声領域の技術なども日々進歩していますし、ロボットと共存する未来もそう遠くないと感じています。
私たちは今から技術を磨いていくことで、ロボットと共存する未来を切り拓く会社になりたいと思っています。
そうなんです。ジールスはロボット屋さん、なんです。
日本をぶち上げる、と息巻いた大学生が起ち上げた会社が、日本発世界を目指す過程で練り込み、磨き込みを掛けていった結果たどり着いた(現時点の)答えがロボット屋さん。一人ひとりの可能性を広げるためのロボット、という点ではIBMのコグニティブ・コンピューティングにも近いところを僕らは目指している。それが改めて明確化されてきました。

ちなみに上記の動画は、IBMさんがコグニティブ・コンピューティングという同社が掲げる(難しい)コンセプトをわかりやすく映像化したもので、僕らがとても参考にしているものになっています。
こうやって言語化・映像化されると、意思統一・判断基準の明確化にめちゃくちゃ生きるな、ということを感じています。
この言葉を紡ぎ出せたのは本当に値千金、途方も無い価値があると思っていて、数年後振り返ると「あの定義がクリティカルだったね」ってきっと振り返るんだと思います(予言)。
経営者はストーリーを磨き込む
清水は、外から見るといろんな過去の動画出演などもあり(笑)、勢い偏重な印象をもられる方も多いと思うのですが、実は繊細に言葉やストーリーを練り込む人間です。僕も同タイプの人間ではあるのですが、圧倒的にストーリーを創る能力・語る能力が高い、稀有な起業家です。起業家らしい起業家、というか。
漫画・キングダムでも「本能型」の武将は本能型同士で刺激を受け合うと思うのですが、僕も彼から多くの刺激を受けており、年齢差なんて関係なくなんとか彼のストーリーテリング力を盗もうと日々ストーキングしています(笑
彼が凄いのは3つ。
- 記憶力が良い。おそらくだが、天性の記憶力というより、振り返り力による記憶の定着率が高い。
- 一つ一つの記憶=点を線にする、ということを毎回のプレゼンでやりきっている。そしてそのプレゼンの回数が異常に多い。
- ネーミングやキーフレーズを発表する「前段」も完璧に作り込む。発表するタイミングとかまで細部まで気を使う。
このように僕が彼を分析していることを知られると今後やりづらくなる可能性はあるのですが(笑)、僕自身が彼の言葉に心を動かされているので、嫌でも学びたくなり僕なりに言語化しているものになります。
ビジョンや経営理念が大事。そういう経営者はたくさんいると思いますが、こうやって生きもののように磨き込みを掛け、ビジョンを育てている経営者は少ないのではないでしょうか。
理念やビジョンは「仕事上の道具」ではなければいけない
少し乱暴に見えるかもしれませんが、僕はこの「理念やビジョンは『仕事上の道具』ではなければいけない」というフレーズを大切にしています。この言葉は僕がサイバーエージェント時代に初めてマネジメントを任され悩んでいる時に手にした本「経営の教科書」で紹介されている言葉。この本自体、今でも何回も読み返している本でありますが、その中でも大切にしている言葉の一つです。
逆に言うと(前職時代の苦い経験からくるものであったりもするのですが)理念やビジョンは活用しないと何の役にも立たないただのきれいな言葉の羅列に成り下がってしまうのです。
道具としてのビジョン
清水を見ていると、ビジョナリーという言葉は「夢を見せる」ということだけでなく、「ビジョンを活用することに長けている」という意味も内包されているのでは?と思わされることがしばしばあります。事実、彼は毎日のようにこれらの言葉を使って社員を鼓舞しますし、ステークホルダーとの良質な関係性を作り上げています。
また僕も参加しているボード会議では、しばしば重たい決断・判断を協議するシーンがあります。選択と集中という言葉がこれほどまでに難しいのか?と思わされる日々ですが、そうした難しいジャッジについてもビジョンと照らし合わせて、その時考えられる最善策を選択するようにしています。
これはやってみて気づいたのですが、ビジョンに照らし合わせて判断する、ということを繰り返すことほどビジョンを磨き込むことは他にありません。実際僕自身もそうした意思決定案を考えるたびにビジョンが自分の中に浸透してくるのを感じますし、ビジョンに沿って判断するということは、ビジョンと照らし合わせたら○○は重要でない/■■はやるべきでない、というように輪郭が明確になってくるのです。
やりたいことを見つけたければ、やりたくないことを明確にすれば良い。という考え方がありますが、ビジョンを明確にしたければビジョンと合致していない事柄を明確にすればよい、ということなのかも知れません。
今後、判断の機会も判断の質(=難易度)も幾何級数的にレベルアップしていくと思いますが、そのたびに僕らは強くなっていくんだろうな、と今からワクワクしています。
起業家は「必ず来る未来」に、どう到達するか?を言語化する
上記の書籍の中で、「人は、大きなことを信じたときに大きな仕事をする」「儲けるという字は、『信ずる者』と書く」とも解説されており、清水はビジョンを信じてもらう術、そしてビジョンを使って大きな仕事をする経営者だと思います。
信じてもらうために、大きなビジョンを掲げながらコツコツと積み上げるためのステップも明確にしていく。
ドラえもんを発明する未来に向けた第一歩が、現在取り組んでいるチャットボット開発です。音声領域の技術なども日々進歩していますし、ロボットと共存する未来もそう遠くないと感じています。
(中略)
「未来を見据えつつ、お客様に本質的な価値を提供する」攻めと守りのバランスが取れていないと、絵空事に終わってしまいます。目先のマネタイズをしつつも、技術を磨き続けることで、ロボット革命の一翼を担っていきたいと思います。
僕が清水のことを良いな、と思うのは、上の発言からもご理解頂ける通り、
- 大きなビジョンを掲げながら
- 現在の仕事がそのビジョンに必ず繋がっていることを示しつつ
- 絵空事で終わらせないために、信じた未来が来るまでのビジネスを冷静に考え実行しているところ
なんですよね。LayerXの福島さんもこのようにおっしゃられていましたが、まさにこれを地でいく起業家だと思います。
ベンチャー企業に必要な力とはなんでしょう?
未来を見通す力?採用力?資金調達力?社長のカリスマ性?天才的なエンジニアの存在?プロダクトをみがきこむ力?etc
僕は 確実にくる未来まで「なんとかする」力 が最も重要と考えています。
(中略)
こういった確実にくる未来まで、「なんとかして」命を繋いで、ノウハウを得た会社は「新概念の世界においては最強の会社」になっています。そしてその新概念が覆いこむ全ての領域を最大効率で飲み込んでいきます。
言葉の限界は思考の限界、思考の限界を取り払うためにも、経営者が使う言葉は常に進化していかなければならないのだな、と思いますし、「なんとかする」ためにも言葉の力が必要です。
コンピュータの父、といえば、アラン・ケイ。彼の有名な言葉に「未来を予測する最も確実な方法は、それを発明することだ」というものがありますが、その発明のための「言葉の発明」もまた、重要なことだと思うようになっています。
まとめ
少し自分の会社を褒めちぎりすぎて若干の気持ち悪さも漂い始めたのは今日はこの辺りで締めたいと思います(笑)
- 優れたリーダーは、ビジョンを使い込む
- ビジョンに照らし合わせて判断を繰り返すことが、ビジョンを最も磨き込む体験である
- ビジョンは儲けにつながるもの。そのためには「信じてもらう」事が必要で、経営者はそのためにストーリーテリングの力を身につけるべき
経営者だけでなく、あまねくリーダーにも通じる話かと思いますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
それでは、本日もありがとうございました。明日も良いスタートアップライフを!
